研究概要 |
脊椎カルシウム結晶沈着症による神経障害発症症例はこの1年間に8症例を追加でき合計36症例となった。出生地は3例が紀伊半島の北部であり、33例が紀伊半島の南部地域であった。河川の水質調査によれば北部の紀ノ川はCa11.8mg/1,Mg1.9mg/1であるのに対して南部の熊野川がCa4.2mg/1,Mg0.8mg/1,古座川がCa12.7mg/1,Mg0.5mg/1,日高川がCa5.0mg/1,Mg1.1mg/1であり、明らかに差が見られた。従って、こうした地域環境の影響を明らかにするため手術摘出標本の黄色靭帯、脊椎骨についてミネラルのMg値,Ca値をプラズマ発光分析法により測定した。Ca,Mg値はカルシウム結晶沈着症の手術摘出標本の5症例と対照の7症例において測定できた。その結果、Ca沈着症のMg値が靭帯では138.7±30.5μgであるのに対して対照では216.2±61.9μgであり、脊椎骨ではMg値が1327.8±231.4μgであるのに対して対照では1971±519.9μgと対照に対して靭帯、脊椎骨とも有意にMg値が低値であり(p<0.01)、逆にCa値は靭帯では高値であるが脊椎骨では低値である事が判明した(p<0.05)。この結果は本年度の第11回日本整形外科学会基礎学術集会、日本マグネシウム学会に発表予定である。またCa結晶形成過程を明らかにするために5症例の手術摘出標本を用いて透過型電子顕微鏡の検索をおこなった。多数出現した軟骨細胞周辺にはmatrix vesicleが多数認められピロリン酸カルシウムの微小結晶の沈着が確認された。また、結晶沈着の周辺では多くの新生血管を認めた.
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