胞巣状軟部肉腫(ASPS)は横紋筋より派生した腫瘍であることを強く示唆する結果が得られた。5例のASPSに加え、最近、更に1例のASPS患者から新鮮組織を得た。本年度は合計6例のASPS組織を電顕観察した結果、6例全例で、滑面のT細管様構造を腫瘍細胞の細胞質で発見した。この結果は、ASPS組織ではかなりの高率でT細管様構造が存在することを示唆し、本腫瘍とT細管様構造の深い関連をうかがわせる。また、新しく得られた新鮮ASPS組織に対して、ruthenium red染色を施した結果、細胞膜とびまん性に細胞質に存在するT細管様構造が陽性に染っているのが観察された。この結果は、T細管様構造が細胞膜の陥入により生じた構造であることを示す。次ぎに、T細管様構造の型について記述する。6例中1例で、集簇型T細管様構造が発見され、この型は稀にしか確認できなかった。残り5例が分散型T細管様構造であった。分散型並びに集蔟型T細管様構造の微細構造を詳細に観察すると、異形のT細管様構造がしばしば認められた。この異形のT細管様構造は、その内腔の封入物質の種類と量によって引起こされるものであった。その封入物質によって、T細管様構造は更に3つのsubtypeに分類できた。優先種のsubtypeIのT細管様構造は、少量の無定型物質と小胞を含み、subtypeIIでは多量の小胞が、subtypeIIIでは多量の無定型物質が内腔に存在していた。分散型T細管様構造はその量も少なく、腫瘍細胞の豊富な細胞オルガネラの中では、普通全く目立たないため精密な観察を行わなければ、これを同定することはできない。そのためT細管様構造の型・subtype・微細構造の情報は、発見困難なT細管様構造の識別と同定に役に立った。T細管様構造と細胞膜の形態学的な連続性は、6例中3例で確認されている。しかしT細管様構造近くでfeet構造は見出されていないため、構造が真のT細管であるとの確認は得られなかったものの、T細管様構造に関する多くの結果はASPSが横紋筋由来であることを示唆する。
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