1、Sham群では、骨髄損傷後3日目までに間葉系細胞の一部にbFGFを発現する骨原性細胞が骨髄内に出現する。さらに、内骨膜に存在する前骨芽細胞にもbFGFが発現し、両者が融合するように骨を形成した。5日目から7日目に新生骨量は最大となるが、破骨細胞もすでに出現し活発な骨吸収をおこなった。この時点よりbFGFやTGFBの発現が破骨細胞にも見られた。10日目から14日目には新生骨は完全に吸収され、元の骨髄組織に復元した。 2、OVX群では骨新生が遅れ、骨量のピークは7日目から10日目となった。免疫染色ではbFGFとTGFBの発現は弱く、新生骨の骨梁も細く、骨細胞の埋入も不完全であった。 3、OVX群ではSham群に比べ、骨髄内でのIL-6mRNAの発現がすべての期間で亢進していた。bFGFとTGFBのmRNAはNorthern blot法にては証明できず、OVX群とSham群では定量的な比較はできなかった。 結論; 1、エストロゲン欠乏下では当初予想した骨形成の亢進は観察されず、未分化間葉系細胞からの骨芽細胞への分化が抑制されると考えられた。 2、エストロゲン欠乏下では骨髄細胞からのIL-6の発現が遺伝子レベルで亢進した。 3、このモデルでは、エストロゲン欠乏による骨芽細胞の分化の抑制が、間葉系細胞からのbFGFやTGFBなどの成長因子の産生抑制によるものなのか、あるいは、直接的に骨芽細胞の分化を抑制したのかは、遺伝子レベルでの成長因子のレガンドと受容体の定量化が必要である。 (4)今後、エストロゲン欠乏がBMPsやその受容体の発現に及ぼす影響を分析すれば、骨粗鬆症における骨形成の遅れの解明に役立つと考える。
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