研究概要 |
【目的】仮骨延長法による脚成長術は広く行われるようになったが、延長の制約因子である骨格筋の変化についてはよく知られていない。今年度の研究でわれわれは緩徐に延長された骨格筋がいかなる形態学的変化をとるかをATPase, SDH染色により観察を行い新たな知見を得たので報告する。 【方法】成熟期日本白色家兎を用いた。脛骨骨幹部で骨切りを行い、延長器を装着し、7日間の待機期間ののち1日0.5mm×2の延長速度で20日間延長を行った。延長終了翌日に屠殺し、前脛骨筋の筋腹中央部より標本を採取したのち,ATPase,SDH染色を行った。延長群と、無処置の正常群、骨切りと延長器装着のみを行った群(骨切り群)との間で筋線維のタイプ別分布と直径の変化を検討した。 【結果】1.筋線維タイプ別の分布は、正常群に比して延長群においてのみタイプ1の増加を,骨切り群と延長群においてタイプ2aの増加とタイプ2bの減少が見られた。 2.筋線維タイプ別の直径は、正常群に比して骨切り群ではタイプ2bの萎縮のみが、延長群ではタイプ2bの萎縮とタイプ1の肥大とがみられた。タイプ2aに関しては骨切り群,延長群ともに不変であった. 【考察】筋線維タイプ別分布の変化については,これまでの報告により機械的刺激によって生じることがわかっているが,今回の実験においても緩徐延長という機械的刺激によりタイプ1からタイプ2への変換が起こったものと考えている.しかし,その機序についてはいまだ明らかではない。筋線維タイプ別の直径の変化については、タイプ2bの萎縮は免荷によるもの、タイプ1の肥大は緩徐延長による高頻度低負荷型の伸張刺激に対してタイプ1に優位な伸張反射が生じた結果と考えている。以上のことから骨格筋に不可逆変化を来さないとされる骨延長量であっても筋線維タイプ別に質的に異なる変化が起こっていることが明らかになった。
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