平成7年度に予定していた力学的刺激(過重力)下での細胞培養実験は、設備備品費不足のため遂行は困難と判断し、実験設備が整う平成8年度より開始する予定である。したがって、平成7年度には、対照基礎実験として、力学的刺激を加えない条件下で骨芽細胞を培養し、パッチクランプ法を用いて同細胞の電気生理学的特性を単一チャネルレベルで調べた。その結果、同細胞には陰イオンチャネルであるクロライドチャネルが存在することが判明した。同チャネルは、1.膜電位依存性を有し、細胞膜電位0mVを中心とする狭い範囲内で活性化され、その活性化電位は細胞内Ca^<2+>の影響を受けて偏位する、2.ATP非存在下で活性化され、逆にATP存在下で不活性化される、3.protein kinase Cによるチャネル蛋白あるいはその調節蛋白の燐酸化によって不活性化され、1型および2A型以外のphosphoprotein phosphataseによる脱燐酸化によって活性化される、4.細胞内Ca^<2+>の増加によって活性が増強される、などの知見を得た。 さらに、上記の実験と並行して、ヒト踵骨の骨萎縮度と日常の活動性との関係について超音波法を用いて研究を行った。その結果、超音波伝播速度(SOS)および広帯域超音波減衰係数(BUA)は、(1).骨粗鬆症患者では、活動量の少ない入院患者の方が活動量の多い通院患者に比べて有意に低下していた、(2).移動能力別では、車椅子群、杖歩行群、独歩群と活動量の低い順に有意に低下していた、(3).脳卒中片麻痺患者では、麻痺側と非麻痺側との間に有意な差を認めなかった、などの知見を得た。平成8年度には、上記の基礎研究および臨床研究データをもとに、力学的刺激を負荷した条件下で細胞培養を行い、電気生理学的手法のみならず、形態的手法(共焦点レーザー顕微鏡)や生化学的手法を用いた実験も鋭意遂行する予定である。また、骨密度測定実験も引続き並行して行い、組織/細胞レベルで得られた知見と照合する。
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