研究概要 |
組織延長技術を用いて脚長差の補正,病的低身長の改善だけではなく,様々の先天性奇形や変形の矯正,外傷後の骨,軟部組織欠損部の充填といった組織改造工学ともいうべき新しい分野が出現しつつある.また骨延長時に得られる延長仮骨は組織再現性に優れ,未分化間葉系細胞から骨への組織分化を層状に示す.我々はこれまで延長モデルを用いて骨軟骨細胞の分化過程c-fosといった癌遺伝子や各種の骨基質蛋白のmRNA,およびそれらの産生蛋白などの局在を通じて組織学的に捉えることを試みてきた.今回破骨細胞の機能を賦活あるいは抑制するMCSF(monocyte colony stimulating factor)やビスフォスフォネートの骨形成作用,あるいは骨形成抑制作用を観察し,さらに細胞内2次性伝達物質で分化や増殖のメッセンジャーといわれているフォスフォキナーゼ-Cや強力なサイトカインであるb-FGFなどの諸因子の遺伝子発現や蛋白の局在を骨,軟骨,あるいは周辺軟部組織で明らかにし,同時に骨軟骨の形成刺激手段を探ることを目的とした. 本年度は家兎を用いて延長仮骨を作製し,MCSFの局所投与,あるいは全身投与によって仮骨形成が刺激されること,またビスフォスフォネートの全身投与によって健常部皮質骨に見られる骨萎縮が有意に抑制されることを発見した.これらの結果を第68回日本整形外科学会,第84回中部日本整形外科災害外科学会,第10回日本整形外科基礎学術集会,第64回東広島整形外科オープンカンファレンス,2nd Combined Meeting of the Orthopaedic Research Societies, 第39回近畿大学医学会,第24回北陸骨傷研究会などで発表した. 今後b-FGF,TGF-β,TNF-α,フォスフォキナーゼ-Cなどの蛋白局在を調べ,伸展や圧迫のメカニカルストレスにさらされた場合の骨形成,軟骨形成,コラーゲン線維形成まどにおけるこれらの因子の役割を明らかにしてゆく予定である.
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