研究概要 |
組織延長技術を用いて脚長差の補正、病的低身長の改善だけではなく、様々の先天性奇形や変形の矯正、外傷後の骨、軟部組織欠損部の充填といった組織改造工学ともいうべき新しい分野が出現した。また骨延長時に得られる延長仮骨は組織再現性に優れ、未分化間葉系細胞から骨への組織分化を層状に示す。我々はこれまで延長モデルを用いて骨軟骨細胞の分化過程をc-fosといった癌遺伝子や各種の骨基質蛋白のmRNA,およびそれらの産生蛋白などの局在を通じて組織学的に捉え、、また破骨細胞の機能を抑制するビスフォスフォネートの骨萎縮予防作用を観察した。また細胞内2次性伝達物質で分化や増殖のメッセンジャーといわれるプロテインキナーゼCなどの諸因子の遺伝子発現や蛋白の局在を骨、軟骨、あるいは周辺軟部組織で明かにし、同時に骨や軟骨の増殖や形成の刺激手段を探ることを目的とし家兎を用いて延長仮骨を作製し、MCSFの局所投与、あるいは全身投与によって仮骨形成が刺激されること。またビスフォスフォネートの全身投与によって健常部皮膚骨に見られる骨萎縮が有意に抑制されることなどを報告した。また本年度は圧迫ストレスに対する組織増殖反応の場としての軟骨組織の骨化機転や増殖機転を遺伝子学的、分子生物学的に解明することを目的とし、実験的変形性関節症モデルを家兎およびラットに作成し、c-fos,c-jun遺伝子の局在、プロテインキナーゼC(PKC)の局在を免疫組織学的に観察した。その結果異常なメカニカルストレスに対応して極めて初期に関節軟骨にc-fos,c-jun遺伝子が発現し、軟骨細胞が増殖すること、それが軟骨基質の幼若化、脆弱化を引き起こして軟骨変性に到ること。 PKC活性化物質であるTPAを関節内に注入することによりc-fos,c-jun遺伝子の発現が抑制され変形性関節症の発生と進行が抑制されることなどを明らかにした。またこれまで軟骨細胞では報告のないムスカリン受容体の存在とその機能などを明らかにし、また軟骨欠損状態にメカニカルストレスが加わることによりフリーラディカルが軟骨細胞より産生され、軟骨が自己崩壊に陥る機転も解明した。これらによって骨粗鬆症や変形性関節症の予防や治療への道が開けたということができる。
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