本研究では、このDifferential Display法を用いて1個体より採取した、正常皮膚線維芽細胞と肥厚性瘢痕線維芽細胞間の特定遺伝子を5クローン検出した。回収したDNAを再増幅し先のRNAとノーザンブロット法にて本来のRNAに発現していることを5クローンの中2クローンにて確認した。有意なバンドを検出したプライマーは、Arbitrary primerが2種類、Anchored primerが3種類であり、このプライマーの組み合わせにて、正常皮膚1種類、肥厚性瘢痕3種類にてDifferential Display法を行った。3種類の肥厚性瘢痕に共通に発現し、正常皮膚には発現していない、特定の遺伝子(Differential expressed gene)を13バンド同定した。また、正常皮膚のみに発現したものを14バンド、正常皮膚、肥厚性瘢痕に共通しているが発現量に差のあるものを10バンド同定した。肥厚性瘢痕に発現した13バンドに関しては、100〜400bps(塩基対)のcDNAであった。これらをArbitrary primerをプライマーとして、DNAシーケンシングを行い、その結果をGene BankおよびEMBLデータベースとホモロジー検索を行った。 Differential Display法は、比較的、短時間、勘弁に遺伝子発現の差を検出できる画期的な方法である。今回の成果にて肥厚性瘢痕由来線維芽細胞と正常皮膚由来線維芽細胞間に遺伝子レベルの差異があることが示唆される。今後も残りのクローンに関してホモロジーの検索を進める予定である。また、異なるプライマーを用いて新たな遺伝子の検索、ケロイドなどの検討も考えている。
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