活性型T細胞が産生するインターロイキン-4(IL-4)は、抗体産生を始めとする多くの免疫機能に影響を与えているが、非免疫系の細胞にもその受容体が発現している。我々は、骨芽細胞培養系において、IL-4を含む培地で培養すると細胞のコラーゲン合成が増加し、20日以上経過すると細胞外基質の石灰化を生じることを既に明らかにしている。本研究において、コンフルエントに達した培養骨芽細胞にIL-4を5日間または10日間作用させると、その後IL-4を含まない培地で培養しても、やはり20日目で石灰化が誘導させることが見出された。加えて、IL-4は骨芽細胞のVI型コラーゲンのα1、α2鎖の合成をRNAレベル、蛋白レベルで増強することも発見した。さらに、IL-4の存在下ではVI型コラーゲンの合成量、蓄積量の増加は5日目をピークにして、漸減するが、その後、I型コラーゲンの合成が増加する。すなわち、コラーゲン合成に関して早期にはVI型、その後にI型の産生が増加するクラススイッチが行われる。逆に倍地中に抗VI型コラーゲン抗体をIL-4と同時に加えておくと、I型コラーゲンの蓄積量が減少し、石灰化が抑制され、コンフルエントに達した細胞の倍地中に高濃度のVI型コラーゲンを加えると、1日以内に細胞が星状に変化し、細胞間接着が消失し、細胞同士が離れてしまう。以上のことから、未分化な骨芽細胞はVI型コラーゲンを産生し、細胞はVI型コラーゲンに接着することにより分化が進み、その後のI型コラーゲン産生、石灰化へと進行すると考えられる。骨組織におけるVI型コラーゲンのIn vivoでの発現は、胎児期に多く、また骨折部に多いとされている。骨折治癒の過程の初期において、T細胞がIL-4を分泌し、VI型コラーゲンの蓄積を促進し、骨芽細胞分化や骨形成に寄与している可能性があり、今後の研究課題である。
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