正常肺モデルにおいて、人工換気中に肺胞内圧の不均等分布が存在するといわれている。そこで、吸気流速とその波形、または吸気終末ポ-ズ付加の長さを調節して吸気パターンを変化させ、各肺葉区域の肺胞内圧を直接dynamicな状態で同時測定し、どのような吸気パターンが強制陽圧換気時の肺胞内圧の不均等分布を最も均一化するかを検討した。続いて、Interleukin-1とTumor necrosis factorを静脈内持続投与し、敗血症性肺水腫モデルを作成して同様の検討を試みた。 正常肺モデルでは、nondependent zone、dependent zone間の吸気終末肺胞内圧の較差は、全吸気時間が等しい場合、吸気流速を遅くしたときより吸気終末ポ-ズを付加したときのほうが減少した。吸気終末ポ-ズ中に肺胞内圧が有意にnondependent zoneでは減衰、dependent zoneでは漸増した。このことから吸気終末ポ-ズを付加すると、吸気初期に高圧であった区域から低圧であった区域に肺胞内圧が再分配され、圧分布がより均一になることが確認された。しかし、敗血症性肺水腫モデルでは、肺胞からの分泌物が増加したため、肺胞カプセル法による肺胞内圧の測定が非常に困難であった。 強制陽圧換気中の正常肺モデルに、吸気終末ポ-ズを付加する吸気パターンを選択することで、肺胞内圧の分布がより均一化されることが解明された。さらに、本研究では解明できなかったが、敗血症性肺水腫モデルにおいても吸気終末ポ-ズ付加が肺胞内圧の不均等分布をある程度是正しうる可能性が推測される。今後、敗血症性肺水腫時の肺胞内圧の測定方法を改良するなど、さらなる検討が必要と考えられた。
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