研究概要 |
雄性SDラット(10週齢)を用い、Seltzerらの方法によりハロセン麻酔下に実体顕微鏡を用いて左坐骨神経の第5.6腰椎神経を結紮し、神経病性疼痛(疼痛過敏)ラット(実験群、n=18)を作成した。これとは別に手術による神経剥離のみを行ない神経を結紮しない対照群(n=18)のラットも作成した。 手術後4日・1週間・3週間に各々、実験群・対照群と手術を施行していないラット(正常群、n=6)について左右後肢の疼痛過敏の有無をvon Freyフィラメントを用いて調べた。その後、ペントバルビタール麻酔下に4%パラフォルムアルデヒドを用いて潅流・固定して得られた各々のラットの脊髄からマイクロトームを用いて第1胸髄・第1腰髄・第5腰髄・第6腰髄のレベルの厚さ40μmの脊髄組織切片標本を作成した。得られた切片をABC法(Vector社)とNADPH Diaphorase法を用いて各々NOSの免疫組織染色と酵素反応による組織染色を行なった。 染色後、顕微鏡下に脊髄の各レベルごとに両側後角部(Laminae I,II,III)、中心管周囲(Lamina X)、両側側索部(Lamina VII)に分けて観察・写真撮影し、染色された陽性細胞(NOSを含む神経細胞)の数を調査して、各群間でレベルごと、また各群内で手術後期間ごとに各々正常群を対照としてANOVAを用いて比較検討した。さらに、von Freyフイラメントによる疼痛域値とNOSを含む神経細胞数の間の相関性の有無を検定した。 その結果、実験群では手術後4日・1週間・3週間のすべてで左側後枝に正常群に比較して疼痛過敏を認めたが、対照群では認めなかった。また、実験群では手術後4日・1週間・3週間のすべてで左側後角部・左側側索部に対照群・正常群・実験群右側各部位と比べてNOSを含む神経細胞の有意な増加を認めた。疼痛過敏の程度の結果と左側後角部・左側側索部のNOSを含む神経細胞数の間には各々有意な相関関係を認めた(p<0.05)。
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