吸気濃度(F_Ianとする)と呼気終末濃度(F_<ET>an)の情報から薬力学コンピュータシミュレーションモデルにより、設定吸入濃度(F_<Del>an)を逆推定するアルゴリズムについて研究した。 シミュレーション以外の他の手法も含めて実用精度を検定するため臨床研究を行った。 コントロールとして、新鮮ガス流入路に麻酔ガス濃度モニター、ガス流量測定センサーを置き直接測定を行った。このコントロール値と、(1)計測吸気終末濃度=気化器設定濃度とする方法、(2)F_Ian×(F_Ian/F_<ET>an)×係数(係数は実験式により求める簡便法)、(3)麻酔医の記録した麻酔チャート上の気化器設定濃度についてスクリーニングテストを行った。F_IanのF_<ET>anはバイパス型ミキシングチャンバー(Bymixer)および質量分析装置などを使いモニタリングした。 この結果、定流量麻酔では(1)はコントロールのF_<Del>anよりも大幅に低く臨床使用は不可能と判断し、(2)は麻酔回路容積の存在のため実際のF_<Del>anよりも変化が緩やかすぎること、(3)は実際のF_<Del>anは気化器濃度の変更時にオーバーシュートする傾向があるが、実際の気化器出力とは異なるが設定値の15%未満にとどまることがわかった。 以上のスクリーニングテストより、測定で得られるF_Ianを入力値と麻酔回路シミュレーションモデルに与え、逆推定測定でF_<Del>anを求めなければならないことが明らかになつた。ところが、実用レベルの麻酔回路モデルは現存しないことが実験の結果判明し、現在、実用的な麻酔回路シミュレーションモデルの開発に研究の焦点を振り向けた。現在、麻酔回路容積の他に、ゴムなどの回路部材・CO2吸着剤による麻酔薬吸着要素をモデル化することが必須だとわかった。このモデルについては基礎検討を加え、このうち、ゴムなどの回路部材への吸着モデルについては、解明に成功した。
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