シャジクモ節間細胞による局所麻酔薬リドカインの取込みを核磁気共鳴法を用いて検討した。当初の研究実施計画では電気刺激装置を用いて、この細胞を興奮させ、その興奮の頻度によりその取込みがどう影響されるかを検討することになっていたが、刺激装置を用いた実験回路が完成していない。というのもこの細胞が実験測定時間内に何回刺激ないし自発的に興奮したかを確認する方法が確立していないからである。そのため、まずこの細胞の原形質膜の脱分極を起こし時には自動的に活動電位を発生させる細胞外液条件、即ち10mMKClを含むリドカイン溶液での取込みを検討した。その他の実験条件としては、25℃、30分間の1mMリドカイン溶液とした。この反応時間においては、KCl非存在下と比べ、有意な取込みの増加は認められず逆に低下傾向が認められた。この場合、脱分極それ自体による取込みへの影響を考えなければならない。勿論、自動的な活動電位の発生による取込みを検討したことになるが、その発生頻度を測定していないためその頻度による直接的な取込みへの言及は困難と考えられた。この結果の解釈としては、細胞が脱分極を起こし活動電位が頻発し原形質膜の性状が変化した場合と、それ程の脱分極を起こすことなしに単に細胞が興奮した場合とではその取込みが違う可能性があることが考えられた。そこで原形質膜の脱分極を起こさない濃度で局所麻酔薬との拮抗作用が他の細胞で報告されているCaイオンについて検討した。細胞外液条件としてはCa濃度0.3mMを含むリドカイン溶液では、Ca非存在下と比べてその取込みは低い傾向は認められたが有意ではなかった。少なくとも、この30分間という条件下ではCaイオンは局所麻酔薬の取込みに影響を与えなかった。
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