研究概要 |
シャジクモ節間細胞による局所麻酔薬リドカインの取込みを核磁気共鳴法を用いて検討した。実験溶液として1mMリドカイン溶液を細胞外液とした。溶液のpHは約5.8とした。この溶液に同節間細胞を9℃,30分間のincubationを行なったのち、水溶液で充分washし、資料とした。一部の節間細胞はincubation後、切断して細胞内液を得て資料とした。核磁気共鳴スペクトロスコピーはJOELGX-270 Spectrometerを用いて得た。^1H-NMRの測定用として外径5mmの試料管を使用した。低温において、室温25℃と比較して、節間細胞によるリドカインの取込みは低値であったが有意な差は認めなかった。又、細胞内液においては、室温25℃と比較して、有意な差は認めなかった。節間細胞全体による取込みと細胞内液における取込みの比較では有意な差は認めなかった。低温においては、局所麻酔薬のpKaは少し高くなるとの報告があり、相対的に非荷電型の局所麻酔薬が少なくなり、細胞の生体膜への透過が減り、同細胞による取込みは一定時間では減少すると推察されたが、結果は室温と比べ有意ではなかった。これは低温はpKaばかりではなく細胞の生体膜への影響も考慮すべきと考えられた。又、低温においては局所麻酔作用は増強するとの報告がある。しかし、その場合の局所麻酔薬の取込みを検討した報告ではその取込みの増強はなかったとしている。今回の結果も取込みの増強は認められなかった。以上より、低温でpHが低い条件下でも、節間細胞による取込みは認められ、必ずしも非荷電型の減少による取込みの減少とは解釈できなく、むしろ一つの解釈として、細胞の生体膜に取り込まれた局在した局所麻酔薬の減少が推測され、これは非荷電型の局所麻酔薬の減少との関与が大きいと考えられた。
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