興奮性植物細胞であるシャジクモ節間細胞は活動電位を有する。この細胞の原形質膜に及ぼす局所麻酔薬の作用を電気生理学的に検討したところ、活動電位の再分極過程の延長と静止電位における膜の脱分極が認められた。こうした局所麻酔薬の作用機序を解明する方法として、核磁気共鳴を用いてこの節間細胞による局所麻酔薬リドカインの取り込みを検討した。確かにリドカインは取り込まれ、主に細胞壁を含めた原形質膜に取り込まれると推測された。しかもそれらとの結合はかなり強いものと考えられた。このことは静止膜電位は局所麻酔薬をwash out後、もどっていくがコンダクタンスは元に容易にもどらないことと関与していると考えられた。また、反応早期に細胞の内部へも分布した。細胞外液のpHに依存してその取り込みは増加したが、Ca濃度0.3mMに対しては減少しなかった。また、細胞の原形質膜を脱分極させ時に自動的に活動電位を発生させることが多い条件下、10mM KC L存在下では増加しなかった。このことより、その取り込みは非荷電型が優位と考えられしかも膜系に局在しやすいと推測された。低温下で細胞外液のpHが低い場合はその取り込みは減少しなかった。この解釈としても、膜系に局在しやすい非荷電型の減少が推測された。リドカインの誘導体QX-314はリドカインと同様に原形質膜を脱分極させた。このことはその作用に荷電型が否定できないことを意味する。一方、同細胞の興奮の初期過程の解析を行なうと、活動電位の立ち上がりの初期にKチャンネルが開口することが示唆された。また、この過程に流れる電流成分を調べるとBa^<2+>によって抑制を受ける成分があると考えられた。これらの成果については今後電流成分の解析との関連や他の局所麻酔薬との比較で検討し発表したい。
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