研究概要 |
1.手術侵襲の大きな手術の代表である食道切除術において血中ANP,BNP,CNPおよびET濃度の変化を血中IL-6濃度の変化とともに観察した。血中IL-6,ETおよびCNP濃度はほぼ平行して手術開始後4時間頃より上昇した。血中IL-6およびET濃度は手術終了前後に最も高値となったのに対し,血中CNP濃度は術後7日間に渡って高値を持続した。血中ANPおよびBNP濃度は血中IL-6濃度とは全く異なり手術中には変化が少なくむしろ手術後2-3日で上昇が見られた。血中NO_2-およびNO_3-濃度は手術開始前に比べて,術中,術後とも有意の変化を示さなかった。 重症熱傷患者で血中ANP,BNPおよびET濃度の変化を観察した。熱傷受傷後7日以内に死亡した患者では,生存した患者比べて,受傷直後の血中ANP,BNPおよびET濃度がより高値を示し,死亡前には著しい高値を示した。熱傷受傷後8日以上生存した患者では血中ANPおよびBNP濃度が受傷後次第に上昇し受傷後3-6日で最も高値となり以後漸減した。血中ET濃度は受傷後0-1にちが最も高値であった。 手術時におけるANP持続静脈内投与の効果を胃切除術を施行される患者で検討した。ANPを投与された患者では,非投与群に比べて尿量がより多く,血圧がより低く維持された。ANP投与群で手術開始初期の血中アルドステロン濃度上昇が抑制された。ANP投与は手術による血中バゾプレッシン,ET,ACTH,コーチゾール濃度上昇には影響を与えなかった。 2.ラット摘出灌流心臓からのET基礎分泌は吸入麻酔薬,イソフルレン,セボフルレンおよびハロセンにより抑制された。エンドトキシンにより心臓からのET分泌は著しく亢進した。エンドトキシンによるET分泌亢進に対して吸入麻酔薬は影響を与えなかった。
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