研究概要 |
本研究はリドカインの多臓器不全に対する有効性を検証するために行われた。白ウサギ17例にエンドトキシン(E.Coli由来)を持続静注し多臓器不全を作成した。このモデルにリドカイン静脈内持続投与(9例)を施行しその効果を生理食塩水投与群(8例)と比較検討したところ以下の結果を得た。検討臓器としてはエンドトキシン静注開始24時間後の肺、肝、腎とした。肺障害に関しては血液ガスデータ(PaO2)、コンプライアンス、肺の乾湿重量比はリドカイン群で高値を示した。また気管支肺胞洗浄液中の白血球、アルブミン、インターロイキン-6、インターロイキン-8はリドカイン群で低値であった。肺組織障害(光顕)の軽減が見られた。肝障害に関しては血液中の酵素(GOT, GPT)の上昇がリドカイン群で低値であり光顕レベルにおいて肝組織障害の軽減が見られた。腎障害に関しても血液中の酵素(Gr, BUN)がリドカイン群で低値であり腎組織障害の軽減が見られた。このようにリドカイン静脈内持続投与はエンドトキシン肺・肝・腎障害を軽減した。肺、肝、腎各組織のミエロペルオキシダーゼ活性がリドカイン群で低値でありリドカインの白血球機能を抑制する作用がこの効果に深く関わっていると考えられた。また12例のウサギの死亡率をエンドトキシン投与の有無(6例ずつ)で比較したところエンドトキシン投与2日後に生理食塩水投与群6例中4例のウサギが死亡した。リドカイン群は6例中2例のウサギが死亡した。死亡率の改善傾向はみられたが有意なものではなかった。さらに副作用の検討ならびに安全性の評価を行う必要があると思われた。
|