研究概要 |
家兎の摘出灌流肺を用いて、肺血管傷害を定量的に評価するための標本を試行錯誤の末完成した。要約すると、家兎を麻酔下に小動物用人工呼吸器による人工呼吸を行い、肺動脈と左房にカテーテルを挿入し灌流を行う。心肺を摘出し重量測定のためFDトランスジューサ-に吊し重量を連続的に測定する。一過性に左房圧を上昇させたときの重量増加から肺毛細血管透過量を測定し、濾過係数Kfcを算出する。このために肺動脈閉塞圧と肺静脈閉塞圧測定用の電磁弁を用いた特殊な灌流回路を作成し、データはオンラインでデータ取込みシステム取込み解析した。その結果無処置の家兎(n=5)のKfcは0.79±0.09〜1.05±0.21g.min^<-1>.mmHg^<-1>.100g^<-1>(Mean±SE)であること、また肺の血管抵抗(Rp)は117.1±12.6 dyne.sec.cm^<-5>で、抵抗の長軸分布を見ると動脈領域の抵抗(Ra)41%、微小血管領域の抵抗(Rm)43.3%、静脈領域の抵抗(Rv)15.8%であり、60分の灌流後でもほとんど変化しないことが明らかになった。次にE.coli由来のエンドトキシン(LPS)100μg/kgの静脈投与による肺血管透過性(Kfc)及び血管抵抗の長軸分布への影響を検討すると(n=6)、Kfc,Rp,Ra,Rm,Rvいずれにも、無処置群との有意な差を認めなかった。またLPS群で、NOの刺激により産生されるcGMP,及びNOの代謝産物であるNO_2,NO_3イオンレベルも有為な上昇を認めなかった。以上の結果から、LPS 100μg/kg静脈内投与の急性効果に伴う肺血管透過性亢進ならびに肺血管抵抗の長軸分布への影響は認められないことが示唆された。
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