研究概要 |
平成7,8年度に引き続きコラゲナーゼ潅流法により採取したWistar系ラット肝細胞を24〜48時間培養しこの初代培養肝細胞を用いて以下の研究項目について検討し結果を得た. 1.肝細胞低酸素ブドウ糖放出の基本的性質に関する研究では,平成9年度には,細胞外カルシウムが低酸素ブドウ糖放出に影響を与えるか否かを検討した.細胞外のカルシウウ濃度はEDTAを加え0mMとすると,低酸素ブドウ糖放出が抑制されることから,低酸素ブドウ糖放出は細胞内へのカルシウムの流入に依存していることが推測された. 2.一方,低酸素による肝細胞障害がどの時点から生じるのかを明確にする目的で,低酸素による細胞障害に関する研究を行った.低酸素による細胞障害の形態学的変化をヘマトキシリンエオジン染色,トルイジンブルー染色,電子顕微鏡を用いて検討した.その結果低酸素による肝障害の形態学的特徴として,核の濃縮および核小体の消失が観察された.また,この変化は培養液中に放出されたLDH濃度と正の相関を示した.さらに肝培養細胞中のグリコーゲン量が多い場合と少ない場合で,低酸素曝露に対する肝細胞の易障害性を検討したところ,グリコーゲン量の少ない細胞では有意に細胞障害を生じやすいことを示唆する結果を得た. 3.好気的条件下での薬剤のブドウ糖および乳酸放出作用に関する研究では,吸入麻酔薬(ハロセン,イソフルレン,セボフルレン)の作用を検討したところ,細胞障害の生じない程度の吸入麻酔薬濃度で,肝細胞から乳酸とブドウ糖の放出が増加することが示された.
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