研究概要 |
塩酸プロカイン溶液によるラット硬膜外麻酔時の速成耐性の評価に関する行動実験および電気生理学的実験はいまだ成功していない。並行しておこなった局麻薬センサを用いた巨大神経軸索の細胞内プロカイン濃度測定実験において、細胞外液に投与したプロカインは膜を容易に通過し、細胞内濃度は細胞外濃度の約半分になることがわかった。局麻薬は非イオン化型で膜を容易に通過するからだと考えられた。事実、塩化コリンのようにつねに荷電している分子は膜を通過できなかった。局麻薬分子は膜を通過したのち細胞内でイオン化する。細胞内pHは7前後であることが、このpHではプロカインはほとんどイオン化しているので、細胞内液中の水素イオンを消費してかなりの細胞内pH上昇をきたすことが推定され、実際にわれわれの開発した高濃度プロカイン含有pHセンサを用いた実験で、1mMのプロカインにより巨大軸索細胞内pHを0.18上昇させ,2mM,4mMと濃度を増やすとdose dependentに細胞内pHが上昇した。細胞内pH緩衝能は6-10nmol/Lであった。プロカインは細胞膜と同様に硬膜を通過して髄液pHを上昇させるとかんがえられるが、通常麻酔に使用する局麻薬濃度は40mM前後なのでかなりのpH変化が生じると思われる。実際の測定にはまだ成功していないが、以上の結果と推論をふまえ、髄液pH変化が実際に起こるかどうかをふくめ、ラット硬膜外麻酔時の速成耐性の評価法を確立して、平成8年度の髄液pH変化と速成耐性の関係の実験に移行する予定である。
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