実験1.自発呼吸下permissive hypercapnia施工時の換気力学および心循環系の反応 【研究方法】 呼吸不全を作成した雑種成犬を持続鎮静し、pressure support ventilationで人工呼吸管理した。サポート圧を30、25、15、5cmH2Oの4段階に変え、各々の30分後に、血液ガス、換気力学諸指標、心循環動態を測定した。 【結果】 PSVのサポート圧が15cmH2Oでは、呼吸回数、最大呼気流量、呼吸仕事量、心拍数が増加したが、PaCO2の上昇が起こらなかった。サポート圧が5cmH2OではPaCO2も上昇した。 【結論】 自発呼吸を残した換気モードでpermissive hypercapniaは可能であるが、呼吸回数や呼吸仕事量、心拍数が増加し、PaCO2が上昇してくるようであれば困難である。 実験2.PaCO2上昇、pH低下と心循環動態、脳圧および組織酸素代謝、組織酸塩基平衡への影響 【研究方法】 ビ-グル犬を持続鎮静し、筋弛緩薬で不働化し人工呼吸管理した。人工呼吸モードをVolume control ventilationとして、一回換気量を10ml/kg体重、呼吸回数を25回/分とした。その後、換気量を20%、40%減少させ、PaCO2、pHの変動と心循環動態、脳圧の変化を観察した。また、同時に酸素消費量の測定、トノミーターによる組織酸素代謝状態の測定を行った。 【結果】 20%の換気量の減少により1時間後にはPaCO2は40mmHgから約60mmHgへと上昇し、pHは7.2台へ低下した。40%の減少では1時間後には90〜100mmHgとなり、pHは7.0台まで低下した。肺動脈圧と脳圧は著しく上昇したが、他の循環系諸指標は変化が少なかった。組織血流/酸素状態、組織酸塩基平衡状態は危険な状態とはならなかった。 【結論】 脳圧亢進、心不全などの場合はpermissive hypercapniaは避けた方がよい。しかし、これらに問題がない場合は組織酸素代謝、組織酸塩基平衡に危険な障害を及ぼすことは少ないであろう。
|