研究概要 |
方法:坐骨神経結紮モデルを用いたmononeuropathyラットにおける痛覚過敏状態を,モデル作成後30日間にわたり,輻射熱刺激に対する逃避反応にて健常側の反応と比較した.また,結紮後4,7,10,14,21,30日後の脊髄後角内の興奮性アミノ酸であるグルタミン酸とアスパラギン酸,抑制性アミノ酸であるグリシンとγ-アミノ酪酸(GABA)を継時的に測定した.痛覚過敏状態完成の結紮後7日目に,脊髄くも膜下腔にグリシン受容体拮抗薬であるストリキニ-ネまたはGABA受容体拮抗薬であるビククリンを投与し,痛覚過敏状態の変化を観察した. 結果:結紮側の足底において,輻射熱に対する反応時間の短縮が結紮4日後より観察され,その状態は21日間続いた後,健常足の反応時間に近づいた.興奮性アミノ酸であるグルタミン酸およびアスパラギン酸の脊髄後角内濃度は,結紮4日後より脊髄結紮側の濃度が上昇し,結紮後21日まで持続した.一方,健常側は,僅かな上昇のみ認められた.シャム手術をしたラットの脊髄内濃度は,31日間にわたり変化が認められなかった.抑制性アミノ酸であるグリシンおよびGABAの脊髄後角内濃度は,結紮側のみ上昇を示した.結紮7日後のラットに対する脊髄くも膜下腔ストリキニ-ネまたはビククリンの投与は,短縮した反応時間をさらに短縮させた.しかし,健常側には影響を与えなかった. 結語:以上の結果より,坐骨神経結紮によるmononeuropathyにおける痛覚過敏状態において,興奮性アミノ酸の放出とグルタミン酸受容体の活性化,および脊髄内内因性鎮痛機構(グリシン系およびGABA系)の賦活化が生じていることが示唆された.
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