血管の内皮細胞においてアゴニストの受容体刺激は細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させ、Nitric Oxide(NO)を産生し、平滑筋細胞のcyclic GMP系を介した血管弛緩を引き起こす。揮発性麻酔薬はこのNO-cGMP系を介する内皮依存性弛緩を抑制する。本研究は揮発性麻酔薬が内皮細胞のCa^<2+>濃度上昇を抑制することによってNO産生低下を将来するという作業仮説を培養内皮細胞を用いて証明することである。 本実験は培養血管内皮細胞を用いる実験であるため、ウシ大動脈内皮細胞を継続培養することが必須である。平成7年度は、その点に重点をおき継続培養、分離、凍結保存が可能となり継続した実験が可能となった。 (1)上記培養内皮細胞を用い、fura-2/AMのインキュベーションの濃度と時間について検討した結果、fura-2/AMの濃度は10μMで時間は60分が最も適していることがわかった。 (2)スライドガラス上でウシ大動脈内皮細胞を培養し、fula-2/AMでインキュベートしたものに、アゴニストとしてブラジキニン(10^<-8>〜10^<-7>M)を投与すると、内皮細胞内Ca^<2+>濃度を一過性に上昇させた。 (3)内皮細胞を培養したスライドガラス上に、0.5MACないし2.0MACのハロセンを飽和させたリンゲル液を還流し細胞内Ca^<2+>濃度の変化を観察した。その結果、ハロセン暴露により一過性の内皮細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を認めるものと、認めないものがあり、この差がハロセンの投与法に問題があるのでないかと検討中である。
|