血管の内皮細胞においてアゴニストの受容体刺激は細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させ、nitric oxide(NO)を産生し、平滑筋細胞のcyclicGMP系を介して血管弛緩を引き起こす。揮発性麻酔薬はこのNO-cyclicGMP系を介する内皮依存性弛緩を抑制する。本研究は揮発性麻酔薬が内皮細胞のCa^<2+>濃度上昇を抑制する事によってNO産生低下を将来するという作業仮説を培養細胞を用いて証明することである。 本実験では昨年度ウシ大動脈内皮細胞を継続培養できるようになり、fura-2/AMにてインキュベーションしアゴニストとしてブラジキニンの投与により内皮細胞内Ca^<2+>濃度の一過性の上昇を測定できるようになった。 (1)本年度はブラジキニンの一過性の上昇の後のプラトーフェーズが最初の基線に比べて上昇しておりプラトーフェーズでも内皮細胞内Ca^<2+>濃度の上昇していることがわかった。 (2)さらにカルシウム除去溶液中では、ブラジキニンを暴露させた場合一過性の内皮細胞内Ca^<2+>濃度の上昇は認めたが、プラトーフェーズは最初の基線まで減少した。 (3)次にハロセン(0.5%ないし2.0%)あるいはイソフルラン(1.0%ないし2.0%)の単独暴露により、内皮細胞内Ca^<2+>濃度は明らかな変化を示さないことがわかった。 (4)ハロセンの暴露は、ハロセンの濃度依存性にブラジキニンの一過性の内皮細胞内Ca^<2+>濃度の増加を減少させた。しかしイソフルランの暴露はイソフルラン濃度を増加させてもブラジキニンの内皮細胞Ca^<2+>濃度の増加には影響を与えないことがわかった。 異常の結果から、アゴニスト刺激によるNO-cyclicGMP系を介した内皮依存性弛緩に対し、揮発性麻酔薬は内皮依存性のCa^<2+>濃度に影響していることが判明した。
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