研究概要 |
平成8年度の研究で新たに明らかになったことは、吸入麻酔薬ハロセンにより惹起される白血球接着反応は外因性NO供給と接着分子ICAM-1のモノクローナル抗体により抑制されるものの、P-selctin抗体では効果がない点、これに対しセボフルランにより惹起される白血球接着反応は外因性NO供給と接着分子P-selectin,ICAM-1のモノクローナル抗体前処置がいずれも抑制する点、さらに蛍光色素でラベルしたP-selectin抗体を用いた免疫組織化学法により、ハロセン、セボフルランいずれの吸入麻酔中にもP-selectin抗体が血管内皮細胞上に表出された点である。これらの結果から結論できることはi)吸入麻酔により惹起される白血球の接着はいずれもICAM-1が関与するfirm adhesionであり、組織障害過程の重要な第一段階そのものである、ii)ハロセン、セボフルランはいずれも転回に関与する接着分子P-selectinを血管内皮細胞上に表出するが、白血球の転回から接着に至る機序は異なる、iii)外因性NOドナーであり低血圧麻酔にしばしば用いられるニトロプルシッドは、吸入麻酔薬が微小循環に与える効果を軽減することの3点である。本研究の成果をもとに、この機序の解明と臨床的意義の検討をさらに研究を進めたい。
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