生体防御機構の一つである「炎症」は疼痛・発赤等を伴うものとされ、オピオイドペプタイド・Enkephalinが炎症に密接な関係があるといわれている。即ち、このEnkephalinは生体内に広く分布し、末梢で起こる炎症の好中球機能に深く関与していることが分かつてきた。例えば、好中球機能の遊走性活性をEnkephalinが活性化することが判ってきた。 本年度は、脊髄より見出したEnkephalin調節因子・Spinorphinが炎症制御機構に作用しているのかを検討した。その結果、脊髄・体液中でSpinorphinが活性発現するのに鍵となるAminopeptidese Nが、疼痛時に異常な値を示す現象を掴んだ。即ち、血液中の好中球表層にあるAminopeptidese Nが帯状疱疹等の疾病時に顕著に上昇することを見いだした。(疼痛学会95・12発表)。この酵素が炎症の制御機構に関与しているSpinorphinの代謝酵素であることも分かった。即ち、Spinorphinが好中球機能の活性酸素生成・脱顆粒・遊走性活性に対してそれぞれ抑制効果を示した。更に、fMLP刺激により引き起こされる細胞内遊離カルシュム濃度を100uM Spinorphinで有為に抑制した。この現象は、Spinorphinが好中球機能の発現を抑制し、シグナル伝達に関与しているカルシウム変化を抑制していることに起因していると考えられた。そこで、急性炎症モデルであるmouse air-pouch法を用いて、Spinorphinの抗炎症作用を検討した。カラゲニンを用いた胸膜炎モデルで、10mg/mouseと高Spinorphinは高濃度であるが炎症誘起効果を抑制する効果があった(薬理学会96・3発表)。更に、このin vivoの実験系に特異的Aminopeptidese N阻害物質Leuhistinを併用投与することにより強い増強作用が観察された。現在、Spinorphinが炎症の制御機構にどのように関与しているのか詳細に検討中である。
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