閉塞性動脈硬化症、狭心症、陳旧生心筋梗塞を合併する手術症例について、術前に大動脈脈波速度計PWV-200(平成7年度分科研費にて購入)による大動脈脈波伝搬速度の測定を行った。また、これらの症例において、手術中に経食道心エコー(Hewlett Packard社製SONOS 1500使用)を施行し、音響定量化技術(Acoustic quantification法; AQ法)による大動脈短軸面積の変化速度を測定した。結果、術前に上記疾患を診断されていても、大動脈脈波伝搬速度は正常値を示す例も多いこと、異常値を示す症例においては臨床症状からこれを予測することが困難であることが判明した。大動脈脈伝搬速度が正常値を示す症例では、大動脈の短軸面積変化は10%から15%であった。また、面積変化速度は1.0EDA/secを越えた。しかし、10m/sec以上の大動脈脈波速度を示し、重症動脈硬化症と判定される症例では、1)大動脈短軸面積の変化速度は小さく、2)術中の血行動態の変動が大きい傾向にあった。以上、大動脈脈波伝搬速度の測定は、手術中、あるいは麻酔中の血行動態変化についてのリスク評価に有用であることなどが強く示唆された。しかし、検討症例数はまだ不十分であり、今後統計的検定により両測定値の関係を明確にし、術中術後合併症との関係を追跡するべく症例を集積することの必要性が示唆された。
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