昨年に引き続き、血管のコンプライアンスの変化が大動脈脈波速度に及ぼす影響を調べた。腹部大動脈瘤および閉塞性動脈硬化症の患者で腹部大動脈に人工血管置換術を施工した患者について、人工血管置換術前後で大動脈脈波速度計PWV-200による人工血管置換術前後の大動脈脈波速度の測定を行なった。 (結果) 1)全身麻酔下に人工血管置換術を予定された腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症の患者について、大動脈脈波速度計PWV-200による大動脈脈波速度の測定を行なった。すべての症例で健常者(7.9m/s)に比べて、大動脈脈波速度は大きい値が得られ、その平均は12.0m/sであった。 2)1)で大動脈脈波速度を測定した患者の人工血管置換術後に再度大動脈脈波速度を測定した。すべての症例で人工血管置換術後の大動脈脈波速度は人工血管置換術前のそれに比べてより大き値が得られ、その平均は16.4m/sであった。 また末梢血管の変化が大動脈脈波速度に及ぼす影響を調べるために、下位脊椎麻酔を施行した患者で麻酔施行前後で大動脈脈波速度計PWV-200による大動脈脈波速度の測定を行なった。 (結果) 脊椎麻酔施行前の大動脈脈波速度測定では、4.6m/s(平均)であった。麻酔施行後の測定では5.1m/s(平均)と大きな変化は見られなかった。以上のことから大動脈の一部を人工血管に置換しただけで大動脈脈波速度は大きく変化したことが分かった。つまり大動脈脈波速度は大動脈の性状の変化を鋭敏に反映することが示唆された。
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