研究概要 |
徐放薬の担体としてポリエチレングリコールを用いたモルヒネ徐放薬を作製し,in vitroでのモルヒネ放出量を測定するとともに,ラット硬膜外腔に注入して抗侵害刺激作用をtail-flick法により検討した。 徐放薬から放出されるモルヒネ量の放出曲線を求めたところ,モルヒネ2.5および5.0mgを含む徐放薬のモルヒネ放出量は,放出開始約3時間および6時間以内に大部分が用量依存性に放出された.次に,モルヒネ2.5および5.0mgを含む徐放薬の硬膜外投与群,PEGのみの投与群,また徐放薬(5mg)を筋肉内に投与した群について動物実験を行った.徐放薬(5.0mg)は注入6日後より対照値に比べ有意な抗侵害刺激作用を発現し,8日後より%MPEにおいて50%を越える抗侵害刺激作用を約5日間持続した。一方,徐放薬(2.5mg)は6日後初めて対照値に比べて有意な抗侵害刺激作用を示したが,以後全経過を通じて抗侵害刺激作用を示さなかった.PEG単独の硬膜外投与および徐放薬(5mg)の筋肉内投与では抗侵害刺激作用を発現しなかった。以上により,モルヒネ徐放薬の硬膜外投与は,脊髄において長期間の抗侵害刺激作用を発現することが示された.モルヒネの用量を増加させて,抗侵害刺激作用が用量依存性に変化するかどうかについてさらに検討する。 今回作製した徐放薬は,注入時は液体で硬膜外腔注入時は体温により固体になる。注入時の温度によっては,一時的に大量の薬物が硬膜外腔から血管に吸収されたと思われる副作用の発現が一部に認められた。より安全かつ確実に硬膜外注入を行うためには,さらに担体についての研究が必要であると思われる。
|