研究概要 |
フェンタニールをくも膜下腔に投与すると,脂溶性のために膜を速やかに通過して抗侵害刺激作用を発現するが、同時に素早く血液中に吸収されるためにその作用持続時間は短い.今回、徐放薬の担体としてポリDL-乳酸を用いたフェンタニール徐放薬を作製し、in vitroでフェンタニールの放出量を測定するとともに、ラットくも膜下腔に注入してtail-flick法により抗侵害刺激作用を検討した。フェンタニール徐放薬の作成方法はフェンタニール(2.5、25μg)とポリDL-乳酸(平均分子量3200)を1:1の比率で所定量を混合し、0.5%のゼラチンを溶解させた生理的食塩水中に縣濁分散させフェンタニール含有微粒子状の徐放薬を作製した.In-vitroでは徐放薬からのフェンタニールの放出量は1時間で90%、4時間でほぼ100%であった。くも膜下腔への投与薬物はフェンタニール(2.5,25μg),徐放性フェンタニール(2.5,25μg)とポリDL-乳酸単独である.徐放薬(25μg)の抗侵害刺激作用はフェンタニール(25μg)よりも有意に延長した。一方,徐放薬(2.5μg)投与およびポリDL-乳酸単独群では抗侵害刺激作用を認めなかった。フェンタニール(25μg)では投与直後に7匹中の4匹に呼吸抑制が認められたが、徐放薬投与では認めていない.以後の経過中には異常運動や麻痺などの神経学的異常は認められなかった。以上より、くも膜下腔への徐放性フェンタニール投与はフェンタニール投与よりも抗侵害刺激作用は延長し,上位中枢作用は認められなかった.より長い延長効果を得るためには、担体とフェンタニールの比率についてさらなる検討が必要と思われた。
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