腰部脊柱管狭窄症では、間歇跛行のごとく、歩行時にのみ神経症状が出現することがある。本症がしばしば排尿障害を伴うことは周知の事実であるが、安静時に行う従来の排尿機能検査では、この下部尿路の機能異常を看過する可能性がある。13名の腰部脊柱管狭窄症患者の下部尿路機能について、安静時と歩行時の違いを検討した。安静時の下部尿路機能の評価には、従来通り臥位による膀胱内圧測定と外尿道括約筋筋電図(conventional urodynamic study、CUDS)を用い、歩行時の評価には、WIEST社製CAMSYS6300 portable urodynamic system (PUDS)を用いた。CAMSYS6300は、microtip transducerを用いてtreadmill上を歩行する患者の膀胱内圧と尿道内圧を記録することができる。13名中11名はCUDS、PUDS共に異常を認めなかった。残る2名中1名で、CUDSで無抑制収縮を有する過活動膀胱の存在が確認された。この1例はPUDSにおいても歩行途中から排尿筋圧の上昇がみられ、歩行が排尿筋無抑制収縮の誘因となる可能性を示唆した。残る1名では、CUDSではなんら異常が認められなかったにもかかわらず、PUDSでは歩行に伴って排尿筋圧の著明な上昇が認められた。これは従来の排尿機能検査法ではdetectできない潜在性の下部尿路機能障害が存在することと、歩行によりその機能異常を誘発することが可能であることを示している。また今回の研究から、本システム(PUDS)が従来不可能であった歩行中の下部尿路内圧記録を可能にし、その結果、誘発された下部尿路機能異常を客観的に検出できることが明かとなり、潜在性神経因性膀胱の概念に新たな側面を加えることができたと考える。今後は、本検査法を用いた症例数の積み重ねと、適応の拡大に研究の焦点を移す予定である。
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