研究概要 |
大腸菌typel線毛とP線毛のそれぞれのリセプターを含む、Mannose-α-(1, 6)-[Mannose-α-(1, 3)-Mannose-α及びGalactose-α-(1, 4)-Galactose-β-(1, 4)-N-acetylglucosamine-βを金コロイドで標識し、これを細菌のadhesineに付着させtypel線毛とP線毛を電子顕微鏡下に検出し得た。尿路感染症起炎大腸菌23株を検討した結果、adhesineは線毛の先端等の特定の部位には局在せず、細胞表層にも分布していることが観察された。本法の結果は、従来の血球凝集試験やラテックス凝集試験による線毛の検出結果とも相関し、更に鋭敏に個々の細菌について検出可能であった。 ラットの尿道、両側尿管を結紮した閉鎖膀胱に、細菌培養液を作用させ走査電顕にて観察した結果、菌体がなくとも細菌由来のエンドトキシンなど種々の生理活性物質を含む培養濾液のみで、白血球の膀胱腔内への遊走、粘膜superficialの膨化・剥離、intermediate cellの露出といった膀胱炎に特徴的な反応が惹起されることが確認された。また、膀胱上皮最上層のmucous layerを形態学的に捉える目的で、膀胱内に空気を0.2〜0.3ml注入、glutaraldehydeで開腹生体固定後摘出するという独自に考案した方法で観察し、濾液処理膀胱では1時間後の早期よりmucous layerは広範に欠損し、上皮が露呈してくることを確認した。 さらに、炎症初期より見られる膀胱壁内での白血球の血管外遊走のメカニズムを明らかにするため、グラム陰性菌外膜の糖脂質で、エンドトキシンの本態であるLipopolysaccarideをラット膀胱に作用させ、サイトカイン、接着分子に着目して検討中である。
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