脳磁図は、頭皮外から脳内磁界の3次元的局在を正確に推定できる非侵襲的検査法で、脳内電流変化の空間的分解能と時間的分解能に優れた非侵襲的検査法であるが、現在まで泌尿生殖器領域で脳磁図を応用した報告は見られない。今回、我々は排尿に関連する大脳皮質機能の解明を目的として、陰茎背神経(DPN)の電気刺激による体性感覚誘発磁界(SEF)を測定した。 66チャンネルヘルメット型脳磁界計を用い、5例の健康成人男子ボランティアに対し、片側DPN電気刺激時のSEF記録し、正中神経(MN)、後脛骨神経(PTN)刺激時のSEFと比較検討した。さらに、各神経刺激時の頭皮上磁界分布の検討、信号源推定をおこない、各神経の大脳皮質における一次感覚野の局在について検討を加えた。 DPN、MN、PTN、いずれのSEFにおいてもその磁気強度のピークを同定可能であった。 各神経刺激時のSEFにおける頂点潜時を比較検討したところ、MN、PTNと比較してDPNの潜時が延長していた(p<0.001)。 頂点潜時での振幅は、MN、PTNと比較してDPN-SEFが低値(p<0.001)であった。 頂点潜時における頭皮上磁界分布は、DPNにおいてもMN、PTNと同様に、単一電流双極子パターンを認めた。さらに、DPN-SEFの頭皮上磁界分布の中心は、ほぼ正中に存在し、かつ陰茎の対側に偏位していた。これは、刺激側の対側の大脳皮質に神経細胞の興奮が起こっていることを示し、なおかつ、大脳半球間裂に面していることを示唆する。 信号源推定では、DPN-SEFでは、刺激側と反対側の大脳半球で、MN、PTNよりも内側に信号源が推定された。 本研究により、はじめてDPN-SEFが測定でき、一次感覚野の同定が可能であったことは、排尿機能や性機能に代表される、泌尿生殖器の大脳支配の解明への第一歩として、今後、脳磁図が有用な手段となりうることを示すものである。
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