研究概要 |
表在性膀胱癌における血管新生因子の発現と腫瘍血管密度ならびに膀胱内再発との相関を検討してみた。 原発性表在性膀胱癌40例と正常組織11例を対象とし,第VIII因子関連抗原,血管内皮増殖因子(VEGF),塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF),酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)免疫染色を施行した。第VIII因子染色標本を用い,最も血管の多い部位の血管密度を最高血管密度とした。16分画グリッドを用いてグリッド内の血管数と,血管壁とグリッド直線との交差数を腫瘍部全域において計測し,腫瘍隣接間質における平均血管密度と平均血管交差数を算出した。 その結果、VEGF,bFGF,aFGFの腫瘍組織における染色陽性率は50%,23%,43%であり,正常上皮ではaFGFが1例のみ陽性であった。最高血管密度はpT1がpTaに比し有意に高かった。平均血管密度と平均血管交差数は腫瘍が正常より有意に高かったが,染色陽性血管新生因子数と強い負の相関を認めた。また非再発群が再発群より高く,平均血管交差数/平均血管密度=血管径比は再発群が有意に高かった。 以上の結果から、表在性膀胱癌において,VEGF,bFGF,aFGFの発現は悪性化との関連が示唆されたが,血管密度とは負の相関がみられた。腫瘍の基底膜下浸潤には局所の血管新生を伴うと考えられた。膀胱内再発は血管密度が低く血管径の太い例に多いと考えられた。
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