研究概要 |
代表的血管増生因子であるVEGF、FGFsの膀胱癌における役割を解析し、本腫瘍の悪性度におよぼす影響について検討した。 1)尿路上皮癌におけるVEGF遺伝子の発現を検索した。 VEGF遺伝子は膀胱癌の40%で過剰発現し、筋層浸潤癌では表在癌より高発現していた(p<0.05)。また、Flt-1とVEGFの遺伝子発現は有意に相関した。 膀胱癌ではVEGFが過剰発現し、その受容体を介して積極的に血管増生が行われていると考えられた。 2)原発性表在性膀胱癌における血管増生因子の局在と腫瘍血管密度ならびに膀胱内再発との相関を検討してみた。 VEGF,bFGF,aFGFの癌細胞における染色陽性率は50%,23%,43%であった。最高血管密度はpT1がpTaに比し有意に高かった。平均血管密度と平均血管交差数は腫瘍が正常より有意に高かったが、染色陽性血管新生因子数と強い負の相関を認めた。また非再発群が再発群より高く、平均血管交差数/平均血管密度=血管径比は再発群が有意に高かった。 以上から、血管増生因子の発現は腫瘍悪性化とは正に、血管密度とは負に相関したが、腫瘍の基底膜下浸潤の際の局所の血管新生を担うと考えられた。一方、膀胱内再発は血管密度が低く血管径の太い例に多いと考えられた。 3)VEGF遺伝子発現の制御機構について 尿路移行上皮癌でのVEGF遺伝子発現にp53遺伝子が影響を及ぼすか検討した。しかし、p53遺伝子の異常をみた群と異常をみなかった群でVEGF遺伝子発現強度に有意差はなかった。VEGF遺伝子とp53遺伝子はいずれも尿路移行上皮癌の悪性度に重要な役割を持つが、p53失活とVEGF遺伝子発現には相関がなかったことから、VEGF発現には他の制御機構が関わると考えられた。 本研究から、膀胱癌では血管増生因子とくにVEGFが癌の発生から悪性化と血管新生に積極的に関与することが示された。
|