18G前立腺検針で採取した組織を用いたRT-PCR法によるFibroblast Growth Factor Receptor2 IIIb(FGFR2IIIb)、FGFR2IIIcおよびFGF2の発現は、新鮮前立腺癌症例7例中それぞれ6例、6例および7例に認められ、ホルモン非依存性再発前立腺癌症例10例ではそれぞれ10例、10例および10例に認められた。前立腺肥大症例8例でも8例全例ににおいてFGFR2IIIb、FGFR2IIIcおよびFGF2の3者の発現が認められた。またホルモン非依存性前立腺癌剖検証例の肝および骨転移巣組織でもこれら3者の発現が認められた。FGFR2IIIbはandrogen反応性ヒト前立腺癌細胞LNCaP、培養ヒト前立腺上皮細胞(HPE)で、発現が認められたが、androgen非依存性ヒト前立腺癌細胞PC-3、培養ヒト前立腺平滑筋細胞(HPSMC)では陰性であった。FGFR2IIIcはLNCaP、PC-3およびHPEで発現が認められたが、HPSMCでは陰性であった。FGF2はPC-3、HPE、HPSMCで発現が認められたが、LNCaPでは陰性であった。KGF/FGF7は前立腺間質細胞を含むすべての組織では発現が認められた。LNCaPではFGFR2IIIbの発現からアンドロゲン反応性が、PC-3では、FGFR2IIIbの消失、FGF2・FGFR2IIIcの発現からアンドロゲン非依存性悪性転化がラットの場合と同様に説明できたが、組織標本ではほとんどの新鮮前立腺癌症例にFGFR2IIIcおよびFGF2の発現が認められ、アンドロゲン非依存性癌が初期から増殖可能な状態にあることが示唆された。前立腺肥大症例でもFGFR2IIIcおよびFGF2の発現が認められたことは、正常細胞でもアンドロゲン非依存性のものが存在しており、ホルモン非依存性前立腺癌はこれらの細胞由来である可能性も示唆された。
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