研究概要 |
1.PIN病変の検索:前立腺全摘40症例のHE標本を見直し、PIN病変を検索。8例(20%)に計15切片にPIN病変を認めた。これら15切片は同一切片内に癌、PIN及び過形成上皮を含んでいたので、組織内のtopographicalな遺伝子異常の分析を調べるのに適したものと判断した。 2.標本の作成:パラフインブロックを4μmに薄切し、これをpoly-L-lysineでcoatingした透明なプラスチックスライドにのせ加熱処理し、切片がはがれないようにした。脱パラ後ヘマトキシリンで核染し検鏡下に油性ペンで目的とする細胞を塗りつぶした。連続切片を用い、各切片上で癌細胞のみ、PINのみ,正常細胞のみを各々インクで塗りつぶし、コントロールとしてインクによる遮蔽を施さない切片を用意した。 3.紫外線照射条件の設定:UV transilluminatorにより約2時間の紫外線照射によりDNAは完全にinactivateされた。 4.p53免疫染色:PINまたは早期前立腺癌での遺伝子異常は現在まだ明らかにされてはいないので、比較的多くの癌でpoint mutationが指摘されているp53についてMAb DO-7を用いて免疫染色を行った。その結果、PINではp53のaccumulationはみられず、癌病巣においてもわずかしか染色されなかった。このことは前立腺癌においては、少なくとも発癌初期の遺伝子変化としてp53の変異は中心的な役割はになっていないものと判断された. 5.前立腺でのCyclin Dの発現:そこで細胞増殖の開始点Gl check pointを制御し、発癌との関係が注目されているCyclinDについて免疫染色を行った結果、12番染色体に遺伝子座をもつsubtype D2が前立腺基底細胞で染色され、PINでは異所性に発現が亢進し、癌ではさらに広汎に発現亢進を認めた。FISHでの検討では12番染色体の前立腺癌でのgainが報告されており、現在サザンハイブリダイゼーションによる遺伝子増幅の有無を検討中である。
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