研究概要 |
(目的)前立腺前癌病変と考えられているPINについて遺伝子レベルで検索し,生物学的特性を明らかにする.(対象と方法)前立腺全摘40例,剖検20例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから癌,PIN,BPH各病変を検索し,該当するブロックを5μmに薄切し,抗p53Ab,DO7による免疫染色,Feulgen染色とCAS200 image analyzerによるDNA ploidyの測定,及びSURF法(Shibataら,1993年)による選択的なDNA抽出とp53exon4-9のPCR-SSCPによるLOHの検索を行った.(結果)p53陽性細胞は基底細胞,PIN,癌で認められ,低分化癌で特に強い染色性が認められた.p53染色性とDNA aneuploidは有意な正の相関を示した.癌のLOHは5例(12.5%)に認め,exon4(1例),exon5(3例),exon7(1例)であった.PINにおいては癌の合併のない孤立型PINでは0%,癌の合併のある併存型PINでは4例(40%)にLOHを認めた.この4例はいずれも合併する癌と同一のexonにLOHを示した.(考察)p53のmutationはPINでも生じていることが示された.しかし,これらはすべて併存型PINであった.この結果はPINが前癌病変であることは支持するのではなく,合併する癌の管腔内進展である可能性を示唆している.
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