研究概要 |
(目的)前立腺前癌病変と考えられているPINについて遺伝子レベルで検索し,生物学的特性を明らかにする.(対象と方法)前立腺全摘80例,剖検例20例のヘマトキシリン・エオジン標本から腺癌,PIN,BPHの各病変を検索し,対応するブロックの5μmの連続切片を作成し,(1)モノクローナル抗体によるKi-67,p53,bcl-2,p21(WAF1)各蛋白の検出(2)TUNEL法によるアポトーシス細胞の検出(3)CAS200computer image analysis systemを用いたKi-67,p53,p21(WAF1)及びapoptotic cellの定量的評価(4)SURF法(Shibata,1993)による特定細胞のDNA抽出とp53エクソン4-9領域のPCR-SSCPによるLOHの検索,を行った.(結果)wild p53はbasal cellで発現を認め,PINのgradeの増加に伴い発現が低下した.腺癌では20%(16/80)にp53 νclear accuμlationを認め,10例(12.5%)でLOHが認められた.PINではlow gradePINではLOHを認めず,high gradePINの10%でLOHを認めた.LOHを認めたPINはすべて癌病巣周辺に存在するconcurrentPINであった.腺癌のLOHはエクソン4(2例),エクソン5(6例),エクソン7(2例)であった.PINのLOHは対応する癌病変のLOHとまったく同一のエクソンに異常を認めた.(考察)p53のmutationはPINでも生じていることが示されたが,それらはすべてすでに癌を合併したconcurrentPINであった.この結果はPINが発癌に先行する病変であることよりも,すでに癌化した細胞の管腔内進展であることを示唆している.
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