研究概要 |
1. TSラットの睾丸導帯におけるCGRPレセプターの量は正常ラットよりも少なく,フルタマイドラットの睾丸導帯は正常ラットよりも多い(いずれも有意差あり)ことが解かった.こらはGFNより分泌されるCGRPの量によって睾丸導帯のCGRPレセプターに調節がかかっているものと解釈できる.すなわち,GFN中のCGRP量の多いTSラットで睾丸導帯のCGRPレセプターのdown regulationが,CGRP量の少ないフルタマイドラットでup regulationがかかっていると思われる. 2. 豚の停留睾丸モデルのうち睾丸下降の第II相(鼡径管から陰嚢への下降)の異常による停留睾丸モデルの入手は困難であった.しかし腹腔内睾丸を持つ豚の大多数において,左右の睾丸にブリッジが架かるかのように索状物が存在し,あたかも人でのPersistent Mullerian Duct Syndromeのようであることが確認された.睾丸下降における腹腔内下降の相(Hutsonらの言う睾丸下降の第I相)での障害による停留睾丸と考えられ,今後も検討していく必要がある. 睾丸下降のメカニズムのうち,第I相はMISが重要な働きをしているとされている.またこの時期にMISは睾丸の成熟にとっても重要な働きをしているとの報告が最近なされている.しかしTSラットもフルタマイドラットも第I相は正常に完了しており,むしろ第II相の時期に何らかの異常により睾丸発育の異常が引き起こされると考えられる.これまでのラットの研究で,第II相にはGFNからの適切な量のCGRP分泌が必要と思われ,CGRPの血管拡張作用や局所の温度の調節作用を考えると,CGRPが第II相での睾丸発育に何らかの役割を持つものと推測される.
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