1)R3327ダニング腫瘍In vivo株の上皮細胞のみを分離し、胎生期泌尿生殖器洞間質および新生児期精嚢腺間質と組織組変えを行い、癌細胞の形態学的分化や増殖率の減少および分泌蛋白の変化を認め、癌細胞の分化誘導と考えられた。しかし、ヒト前立腺癌細胞株(PC3株、ND-1株、DU145株)では、この様な現象はみられなかった。この原因として、各細胞株の倍加速度やアンドロゲン依存性の差、また動物種特異性が考えられた。 2)ラット胎生期泌尿生殖器洞間質とヒト前立腺癌細胞株(PC3株、ND-1株、DU145株)との上皮-間質の相互作用の研究をセルカルチャー・インサートを用いIn vitroで行った。しかし、癌細胞の形態学的変化は誘導できなかった。この原因として、In vivoの場合と同じく各細胞株の倍加速度やアンドロゲン依存性の差、また動物種特異性が考えられた。 3)胎生期泌尿生殖器洞間質の部位による誘導能の差が、前立腺の形態的機能的腺内異質性の原因の一因となっているとの仮説から、ラット胎生期泌尿生殖器洞間質を部分的に用い、成獣ラット前立腺上皮細胞および膀胱上皮細胞と組織組変え実験を行った。しかし、ラット前立腺各葉の特異抗体を用いた免疫組織化学染色やWestern blotでは、間質の部位による分泌蛋白誘導能の差はみられなかった。前立腺の形態的機能的腺内異質性は、上皮細胞側に原因があることも推測された。
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