研究概要 |
1 目的 本年度の目標は共同研究者の佐谷らが報告した、大腸癌およびその転移巣において高頻度に認められ、かつ正常大腸粘膜には認められない、いわゆる正常型のCD44Hisoformとは異なるsplicevariantの一つであるCD44R1lisoformが泌尿器科癌においても同様の癌特異的な傾向があるか否かを遺伝子レベルで検討することである。 2 方法および結果 (1)膀胱癌組織(8例)、正常膀胱粘膜(3例)より抽出したmRNAからrandom prime法にてcDNAを合成し、これをtemplateとしてCD44R1とCD44Hを区別できるようにデザインされたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRを行った。CD44R1の増幅が認められたのは、膀胱癌8例中3例(37.5%)、正常膀胱粘膜3例中1例(33.3%)で、CD44Hの増幅が認められたのは、膀胱癌8例中6例(75%)、正常膀胱粘膜3例中3例(100%)であった。従って当初予想された大腸癌におけるようなCD44R1の癌特異性は認められなかったが、症例数が少ないこと、他にもいくつかのcDNAの増幅を疑わせるバンドが認められたこと等から、さらに検討を進める必要があると思われた。今後、より高感度のPCR法やCD44probeを用いたPCR-Southern blot等にて検討していく予定である。 (2)佐谷らが作製したCD44R1産物に対する抗体を用い、膀胱癌5例に免疫染色を行った結果3例(60%)に癌細胞の陽性染色が認められた。前述のPCRにおけるCD44R1の陽性率のdiscrepancyを認めるが、これも症例を追加し検討していく予定である。 震災のために凍結標本ならびにmRNA, cDNAを喪失し、当初予定していた症例数を検索し得なかったことを追記させて頂きます。
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