研究概要 |
1.フローサイトメトリー(FCM)はリンパ球などの血中浮遊細胞の表面マーカーの解析に一般によく用いられるが、同様に固形腫瘍でも細胞表面糖鎖の定量が可能であるかを検討した。浮遊細胞のモデルとして2種類の膀胱癌培養細胞株T24、KK47を、固形細胞のモデルとしてそれぞれのcell lineのマウス皮下移植腫瘍を用い、両者のレクチン(Con-A,PNA)の陽性率を比較した。両者間に良好な相関を認め、固形腫瘍をsingle cell suspension化することの妥当性が証明された。 2.また臨床検体11例を用いた従来の免疫組織染色法とFCM法との比較では良好な相関関数が得られ、臨床検体でも膀胱癌の表面マーカーの解析としての本法の有用性が明らかになった。 3.次に膀胱癌培養細胞株T24、KK47を用い、細胞表面の糖鎖をレクチンで標識染色した後に界面活性剤(Triton X-100)とParaformaldehydeで同時に処理し、次いで、Propidium Iodideで核染色をすることで細胞表面糖鎖量とDNA量の同時解析を試みた。結果はCon-Aを用いた糖鎖の陽性率は、従来の方法と比べ低くなるものの相関があり測定に十分に耐え得るものであった。またDNA量も正常ヒトリンパ球ではCV Coefficient of Variation)値3.7と良好で、裸核化しない状態でもDNA ploidyの解析が可能であった。 4.しかし、PNAを用いた糖鎖の定量はTriton X-100で処理すると陽性率が大きく減少した。Triton X-100で細胞表面に変化が起きたのかを検証するために、金コロイドでレクチンを標識し、走査電子顕微鏡で観察する予定である。また他のレクチン(LTA,SBA,TKA,DBAなど)を用いても今後、検討する予定である。
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