研究概要 |
平成7年度の研究は1、落射蛍光装置 2、トリプルバンドフィルター 3、対物レンズを設備備品として購入し、fluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて行われ、以下の知見が得られた。 1、前立腺癌53例に対して染色体8番短腕(8p22,8p23-pter領域)欠損および10番長腕(10q24-qter領域)欠損を検討し、予後(腫瘍増悪の有無)を中心とした臨床背景との関係を検討した。 2、前立腺癌における染色体8番短腕および10番長腕欠損はそれぞれ74%、55%と高頻度であった。 3、病理組織学的分化度は染色体8番短腕欠損例において有意に低分化の頻度が高かったが、10番長腕欠損例との間には関連が認められなかった。 4、根治的前立腺全摘術が施行された27例について各染色体特定欠損と腫瘍増悪との関連を検討した結果、染色体8番短腕欠損のなかでも特に8p22領域の欠損のみが腫瘍増悪と有意の関連を示した。 5、上記の結果は8p22領域に前立腺癌の仮想腫瘍抑制遺伝子が存在するという仮説を臨床的に支持する結果であった。 平成8年度の研究は冷却機能付恒温槽を設備備品として購入し、染色体16番長腕欠損の有無と臨床背景との関係を検討し、平成7年度に検討した染色体特定部位欠損を含め、いずれの欠損が前立腺癌の予後を予測する因子となるかを検討する予定である。
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