移植片拒絶反応の場では免疫反応と炎症反応が絡み合っている。移植片障害のメカニズムについては現在、細胞障害T細胞(CTL)による特異的移植片障害と、活性化されたマクロファージなどによる非特異的移植片障害が考えられているが不明な点が多い。私たちはマウスのスポンジ移植モデル(マウスの皮下にポリウレタンスポンジを移植し、それにアロ脾細胞を注入するとアロ移植片となる)を用いた研究で、移植片ではCTL活性の上昇とともに一酸化窒素nitric oxide(NO)産生が増加し、Donor-Specific Transfusion(DST)を行うと、Cyclooxigenase系のprostaglandin E_2(PGE_2)の産生が亢進され、NO産生、CTL活性が低下することがわかった。さらに、免疫抑制剤Tacrolimusをスポンジ移植モデルに投与すると移植片内のCTL活性抑制とともにグラフト浸潤細胞のNO2-産生が抑制され、NO産生はCTL活性の動向と一致していた。また、Tacrolimus投与にてNO2-産生を抑制されたグラフト浸潤細胞はLPS/IFN-g刺激にてNO2-産生の回復がみられた。遅延型過敏反応(DTH)も移植片障害のメカニズムの一つとして考えられているが、マウスを用いたアロ抗原によるDTH反応はNO合成阻害剤の投与により抑制されることがわかった。このことはDTH反応もNO産生と関連があることを示している。以上のように移植片拒絶反応の場においてNOは多様な働きを持っていることがわかった。今後さらに移植片拒絶反応時、免疫寛容時におけるNOの役割を検討していきたいと思っている。
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