われわれが開発した家兎近位尿道を用いたin vivo isovolumetric urethral pressure modelは近位尿道固有の反応を敏感に、しかも定量的にみることができ、きわめて有用な実験モデルと思われる。本モデルを通じ、α_1作働薬は近位尿道のfast responseの収縮に、α_2作働薬はslow responseの収縮に関与し、両者の反応形式に違いがある。また、α作働薬の反応には性差がみられ、α_1作働薬の反応は雄において優位で、α_2作働薬の反応は雌において優位であった。このことは、雄ではcontinenceを保つという意味以外に、射精の際に近位尿道の急激な収縮を必要とするため、fast responseを起こすα_1受容体が圧倒的に優位で、この必要のない雌ではcontinenceを保つためのslow responseを起こすα_2受容体が雄に比べて優位に存在すると考えられた。 雌家兎を用いたα_2受容体の反応性の検討では、卵巣を摘出した家兎においてはα_1作働薬の収縮反応に変化はないものの、α_2作働薬の収縮反応は有意に低下した。エストロゲンを投与された雌家兎尿道ではα_2受容体の数が増すと同時にα刺激薬に対する収縮反応が大きくなることが報告されており、α_1受容体とエストロゲンは密接に関与していることが示唆される。すなわち、高齢女性に尿失禁が増えるのは卵巣からのエストロゲン分泌低下に起因したα_2受容体の脱落が影響している可能性がある。 一方雄におけるα受容体の反応実験において、ヒト前立腺肥大結節切片を用いたisometric studyによって、前立腺肥大結節切片は正常群と比較してα_1作働薬に対し有意な収縮反応を示した。またα_2作働薬によっても明らかな収縮反応を示し、α_1受容体のみならずα_2受容体の収縮反応についても無視できず、前立腺肥大症の排尿障害を改善させるためには、α_1、α_2両受容体をブロックする薬剤が有効と思われる。 さらに現在用いられている各種α_1blockerの比較実験において、タムスロシンは他の薬剤に比較し、血圧に影響せず最も尿道選択性を有している薬剤であった。また近位尿道、前立腺の収縮に対するα_1antagonistとしての作用はタムスロシンが最も強く、ブナゾシン、プラゾシンがこれに次ぎ、以下テアラゾシン、アルフゾシンの順で、ウラピジルが最も弱い結果であった。しかし、α_1作用の弱いウラピジルはα_1のみならず、α_2antagonistとしての要素を兼ね備えた薬剤であり、同じα_1blockerでもその特性に違いがあった。
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