平成2年から平成4年までの間に、当科において経験したoligozoospermia症例10例、non-obstructive azoospermia22例、controlとしてobstructive azoospermia5例の精巣標本を用いて検討した。第一に、HE染色標本でSertoli細胞数および各成熟段階のgerm cell数を算定し、精祖細胞の減少あるいは精祖細胞後の精子発生能の低下を認めた。前者の一部では血中FSHが正常であり精祖細胞自身の増殖能の障害が示唆された。第二に、抗PCNAマウスモノクローナル抗体を用いたABC法によりPCNAlabeling indexを算定したところ、control群では0.7-1.2%(n=5)であったが、特発性不妊症32例中6例では0.2-0.3%と極端に低下していた。第三に、TUNEL法により精細胞のapoptosis inexを検討し、特発性不妊症32例中13例(40%)で亢進を認めた。 血中FSHが正常であるにもかかわらず精祖細胞およびその後の精子細胞数が減少している症例の存在は、精祖細胞自身の増殖能の低下が精子発性能不全の原因となる可能性を示唆する。特発性不妊症例でのPCNAlabeling indexは15%と低下しており、精子細胞の分裂増殖能の異常を示唆した。さらに、これらの要因に加え、apoptosisnの亢進が精子発生能障害に重大な影響をおよぼすと考えられた。
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