まず、膀胱壁厚測定方法を、以下のように確立した。患者の膀胱が充満した状態で、超音波診断装置に接続した7.5MHzのリニアプローブ(設備備品費で購入)を用いて、恥骨上から膀胱前壁の超音波断層像を描出し、膀胱壁の厚さを測定する。その後、排尿もしくは導尿により、膀胱内の尿量を測定する。膀胱壁の厚さは膀胱内尿量により変化するため、膀胱を球体にシュミレーションし、膀胱壁厚と膀胱内尿量から膀胱壁体積を算出することにより検査結果を標準化する。膀胱壁の比重がほぼ1であるので、求められた近似的膀胱重量を、臨床的パラメータとして用いることが適切であることが明らかになった。さらに部検で得られたヒト膀胱10例を用いた基礎的検討から、膀胱壁の厚みはどの部位でもほぼ同じであることが確認された。 次に、正常例および前立腺肥大症症例に対し実際の測定を施行し、臨床的意義についての検討を開始した。対象は当施設において経直腸的超音波断層法で前立腺肥大症と診断された56例と、正常(排尿障害がなく、神経因性膀胱や下部尿路疾患のない病院コントロール)42例とした。正常群の膀胱重量は、25.5±5.6g(平均±標準偏差)、前立腺肥大症の膀胱重量は47.2±16.2gと、両群間に有意差が認められた。また膀胱重量が35.0g未満の場合には、50例中42例が正常例であるのに対し、35.0g以上の場合には、48例全例が前立腺肥大症であった。 以上のことから、膀胱重量測定は、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞の有無を予想する上で極めて有用であることが明らかになった。今後さらに他の臨床的パラメータとの整合性について検討を要する。
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