研究概要 |
本邦における死体腎移植は、地域ネットワークとして単純冷却保存が施行され、短時間のシッピングが可能であった。しかし、1994年4月より全国レベルでの腎移植ネットワークが整備され、全国レベルでのシッピングが行われるようになり、長期腎保存が必要となってきた。今回、我々は長期腎保存の方法として現在最も有用な保存液であるU-W保存液を使用し低温腎潅流保存と単純冷却保存を比較した。 1.単離腎低温潅流保存と単純冷却保存における腎Viabilityの検討 単離腎低温潅流群として、雑種成犬の両腎を摘出し、1腎は腎動脈よりヘパリン加生食で腎内をwash outした後に低温腎潅流保存装置(ミネソタ式腎潅流装置MOX-100)に装着、U-W液を潅流液として使用し、さらに酸素供給して4℃で潅流した。一方、単純冷却保存群としてU-W液でwash out後、さらにU-W液で満たした保存カップに収納し、4℃で保存した。その後、3日目および7日目に腎Viabilityを評価するために、腎皮質を1g切除して、ホモジネイト後除蛋白の処置を加えHPLCにて腎皮質のATP、ADPおよびAMPを比較検討した。 腎皮質ATP,ADPおよびAMPより推定された腎Viabilityは、単離腎低温潅流保存群が単純冷却保存群に比較して保たれており、さらに保存期間に関しては3日目より7日目において2群間の差は明かであった。以上より、長期腎保存においては低温潅流保存が単純冷却保存より腎Viabilityは保たれていることが示唆されたものと判断される。 今後は、以上の2群において戻し自家移植を施行の上、生着率の差を検討し、さらに潅流液組成において心房性Na利尿ペプチドあるいはCa拮抗剤の有無に関してその有用性を検討する予定である。
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