研究概要 |
免疫学的寛容の確立もしくは特異的免疫抑制法の開発の一助を目的としてドナー抗原感作による移植片生着延長効果の機序解明を試みた。リンパ球混合培養(MLC)においてstimulation idex 10以上の6組の生体腎移植予定患者にcyclosporine投与下に術前ドナー輸血(donor specifix transfusion-DST)を100mlづつ1, 8, 15日目に行った。リシピエントの末梢血のリンパ球表面マーカーCD3,CD4, CD8, CD11, CD19, CD25, HLA-DRをフローサイトメーターで測定し、その変化を輸血前、輸血後1, 3週および移植直前に検討した。リンパ球混合反応(MLR)抑制細胞の解析は竹内らの方法に準じて行った。 その結果CD8陽性細胞が21.8%から輸血後1, 3週には27.2%, 25.1%に増加した(p<0.05)。HLA-DR陽性細胞も有意に増加した。CD11b陽性細胞は増加したがその変化は有意ではなかった。two-colorフローサイトメーターの解析ではCD11b/CD8陽性細胞が有意に増加した。MLR抑制細胞の解析では6例中3例に25%以上の減少を認めた。 DSTによるCD8陽性細胞の増加によるCD4/CD8陽性細胞比の減少と、HLA-DR陽性細胞の増加はドナー抗原感作がsuppressor cellに影響を与えていることを示していると考えられた。MLR抑制が認められたこと、さらにCD11b/CD8陽性細胞の増加が認められたことは単球がsuppressor cellとして働いている可能性を示唆していると考えられた。次年度以降の研究でsuppressor cell増加の確認をさらに行い、その変化がgraftの予後に与える影響について検討を重ねる。
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